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この体験記は第10話です。シリーズ全体はこちら▶
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はじめに
私の乳がん体験記シリーズも、いよいよ最後の記事となりました。
今回は、私が治験に参加したこと、そして経過観察に入ってからの暮らしを綴ります。
◆ 治験を提案された日
病理検査の結果を聞いたあと、主治医との話題は術後薬物療法に移りました。
転移による再発を防ぐための治療です。
トリプルネガティブ乳がん・ステージ2aの私に、標準治療として提案されたのは以下でした。
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化学療法:カペシタビン(ゼローダ)…内服の抗がん剤・6か月
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分子標的薬:ペムブロリズマブ(キイトルーダ)・6か月
そして、もう一つ提案されたのが 「治験」 でした。
治験とは、主に製薬会社が開発した新しい治療法が、本当に有効で安全かどうかを調べる臨床試験のことです。(『最高のがん治療』2020, p92-3 より)
私が治験を勧められたのは、参加条件に合致していたからでした。
その日、主治医の横には治験コーディネーターさんが同席していました。主治医から大まかな説明を受けたあと、別室で改めてコーディネーターさんから詳しく話を聞きました。
治験の目的、参加条件、副作用の可能性……
一つひとつ丁寧に説明してくれたのを覚えています。
◆ 本で得た知識が背中を押してくれた
たまたまですが、治験については、術前薬物療法中に読んでいた本
『最高のがん治療』で少し知っていました。
逆に、この本を読んでいなかったら
「治験=未知の世界、なんだか怖い」という印象だけで終わり、
参加していなかったかもしれません。
◆ 参加を決めるまでの心の揺れ
治験コーディネーターさんの話を聞きつつ、同行してくれていた夫にも相談して治験に参加するかどうか考えました。
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治験薬のこれまでの臨床試験結果
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経済的負担が軽くなること
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長期間フォローしてもらえる安心感
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途中で辞めても標準治療に切り替えられること
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新しい治療を受けられる希望
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副作用や未知のリスクへの不安
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私が参加することで、未来のがん治療が進歩するかもしれないこと
多少悩みましたが、比較的早く参加を決めました。
再び診察室に戻り、主治医にも意思を伝え、治験の書類にサイン。
その日のうちに、治験のスケジュールが立てられました。
どのような治験かは口外しない約束になっているので詳しくは書けませんが、
術後薬物療法として行った治験は最後までやり切り、
そして今、経過観察に入って7か月が経ちました。
この選択が正しかったのかどうか、正直まだわかりません。
でも――「未来の誰かのためになるかもしれない」という思うと、不思議と後悔はありません。
◆ 経過観察の日々
術後治療は終わり、今は3か月ごとの診察を受けています。
内容は、
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採血
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診察
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左胸の傷の回復確認
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右胸~右脇の触診
年に1度は、右胸(手術していない方)のマンモグラフィも受けます。
薬物療法の副作用の影響か、肌がまだ弱い部分もあります。
でも、大きなトラブルもなく体調は安定しています。
「今、私は経過観察に入っているんだ」
そう実感できる日々です。
通院のたびにホッとする気持ちと、
「また3か月後に元気にここへ来よう」
という小さな目標が生まれます。
◆ 治療前からの変化
治療を終えて気づいた体の変化もあります。
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リンパ浮腫予防:左上半身に負担をかけない生活(詳しくは番外編で)
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生理が止まった
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顔の印象が変化(頬骨が目立ち、ほうれい線やマリオネットラインが出現)
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色素沈着やホクロが増えてきている気がする
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長年の便秘が解消
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過敏性腸症候群の症状(食後の膨満感・腹痛)が解消
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コーヒーを飲むと下痢しやすい
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揚げ物をあまり好まなくなった
- 足の爪の状態(黒っぽい変色・表面の凸凹)の改善が遅い
見た目や体質の変化に戸惑うこともありますが、
少しずつ”今の自分”と付き合う方法を模索しています。
◆ 宅トレが習慣に
薬物療法中、副作用で体が一気になまりました。
筋力も体力もガクッと落ち、危機感を覚えました。
体調のいい日はリングフィットアドベンチャーを超低負荷でしていました。
そして治療の終盤から始めたのが、
フィットネスアプリ「Schellin Fit(シェレンフィット)」。
週4〜5回、自分のペースで好みの宅トレのプログラムをこなしています。
最近は卓球にも挑戦中!
最初は体力回復のための運動でしたが、今ではすっかり生活の一部になりました。年齢的にも、運動をやめるとすぐ体型に出ますしね(お腹と太もも!)。さすがに腰回りは、若い頃のような細さには戻せませんが、――筋トレによる体の変化を実感して「まだまだできる」と思える自分が嬉しいです。
◆ これからのこと
これからもしばらく続く、「経過観察」という時間。
たとえ寛解になったとしても、
不安がゼロになる日はきっと来ません。
でも、私はこう思っています。
「がんになったことも含めて、人生を楽しみたい」
がんも、治療も、回復も、全部が今の私をつくる要素だから。
何歳まで生きるのかはわかりません。
でもいつか人生の最後の日に、
「ああ、楽しい人生だった」
そう思えるよう、一日一日を大切に歩んでいきたいです。
◆ おわりに
10回にわたる乳がん体験記を読んでくださり、ありがとうございました。
私の経験が、がんサバイバーの方、家族の方、
そしてこれから治療を受ける誰かの、少しでも参考になれば幸いです。
乳がん体験記はこれで一区切りですが、
書ききれなかったことは番外編として綴る予定です。
▶前回の記事はこちら