この体験記は第3話です。シリーズ全体はこちら▶︎【https://kinakomilk.com/nyugan00/】
紹介状を持って訪れた大きな病院。そこで、思いがけず「脇のリンパの腫れ」を指摘されました。検査の結果、リンパ節転移が判明し、治療方針が決まるまでの記録です。同じように治療前の検査や決断で悩んでいる方の、少しでも参考になれば嬉しいです。
紹介状を持って、大きな病院へ
検査結果を持って、紹介先の大きな病院を初めて訪れた日。
ここで治療が始まるんだ、と心の準備をして行ったのですが——
触診とエコーで確認された後、主治医の先生に
「最近ペットに引っ掻かれたり、ケガをしませんでしたか?」 と聞かれました。
我が家にペットはいないので「え?それってどういうこと?」と思いつつ 「ペットはいません。最近猫カフェには行きましたけど、猫を撫でていただけで特に何もされていません。ケガもしていません」と答えると、「脇のリンパが腫れてますね」と言われたのです。 そしてすぐに脇のリンパ節の細胞診を実施することに。
私の乳がんは小さめのしこりだけでステージ1だと思っていたのに、 初診からいきなりのリンパ節転移の疑い。先の乳腺クリニックで既に浸潤がん(乳管の外に広がった乳がん)と診断され、 転移や再発をする危険性があることは頭ではわかっていたものの、 思いのほか乳がんが進行している可能性が出てきて、正直動揺しました。
なお、脇のリンパ節への転移がある場合、手術前に抗がん剤治療などの薬物療法が必要になってきます。
次々と行われた精密検査
治療方針を決定するために、さまざまな検査をしました。
- 採血・採尿
- レントゲン
- 心電図・肺機能
- 胸部MRI:腫瘍の広がりをチェック
- PET-CT:全身の転移チェック(がんが光って見えるが、微小転移は見つかりにくい)
リンパ節転移の可能性を示されていたので、 肺や骨、肝臓などの乳腺以外の臓器への転移がないか、 結果を聞くまでの1週間はかなり不安でした。
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リンパ節への転移
2回目の受診、脇のリンパ節の細胞診と精密検査の結果を聞きに行ったとき、 はっきりと「腋窩リンパ節に転移があります」と告げられました。
- がんの形態:浸潤性乳管癌
- リンパ節転移:転移あり
- ステージ:ⅡB または ⅢA
※がん細胞が鎖骨付近まで広がっているかどうかによるとのことでした。 - がんの性質・性格:トリプルネガティブ
前の病院からの検体の病理検査の結果、 乳がんのサブタイプは変わらずトリプルネガティブでした。 (ちなみに母も乳がんでしたが、最初の病院と次の病院でサブタイプが変わったので、 病院が変わっても再検査してもらうことは大切だと思いました)
リンパ節転移が確定し、抗がん剤治療をはじめとする 術前薬物療法を行うことが決定しました。 遠隔転移がなかったのは本当に安心しました。
治療方針の提示
一連の検査を経て、主治医から治療プランが提示されました。
簡単にいうと 化学療法(抗がん剤治療)→ 手術 という流れです。
化学療法(前半3ヶ月)
- パクリタキセル(タキソール)…(点滴)毎週12回
- カルボプラチン…(点滴)毎週12回
- ペンブロリズマブ(キイトルーダ)…(点滴)3週間ごと
化学療法(後半3ヶ月)
- AC療法 [アドリアマイシン + シクロホスファミド]…(点滴)3週間ごと
- ペンブロリズマブ(キイトルーダ)…(点滴)3週間ごと
手術
- 乳房部分切除術
- リンパ節郭清術(※化学療法で転移が消えなかった場合)
私は「トリプルネガティブ乳がん」なので、 抗がん剤に加えて免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダも使うことになりました。
抗がん剤治療を受けることに対して、私はそれほど抵抗はありませんでした。 厚労省の厳しい審査を経て標準治療とされていること、 副作用があっても命を守るために必要だと腹を括れたからです。
化学療法で脇のリンパ節転移が消えない場合に必要な 腋窩リンパ節郭清術は、術後に腕のリンパ浮腫のリスクがあると聞かされました。できればリンパ浮腫のリスクは避けたかったので、抗がん剤がしっかりと効いてくれることを願いました。
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妊よう性温存を選んだ理由
治療方針の話が一段落したところで、主治医から「今後の妊娠を考える場合、抗がん剤治療の前に受精卵凍結などの妊よう性温存を検討できます」との提案がありました。抗がん剤は卵巣にダメージを与えるため、妊よう性(妊娠するための力)が低下することがあるのです。
私はアラフォー。妊娠出産のリミットが近い中、子どもを持つかどうか、夫婦で初めて本気で話し合いました。夫が費用を全額負担すると言ってくれたこともあり、妊よう性温存を行うことに決めました。
もしホルモン受容体陽性乳がんだったら、 卵巣刺激に使用するホルモン剤ががん細胞の増殖リスクになるため妊よう性温存は選ばなかったかもしれません。
妊よう性温存の治療費(自己負担額)は44万円前後でした。通院は週に2~3回ほどで、採卵までは約2週間を要しました。自己注射、副作用、頻繁な通院、全身麻酔での採卵など、体力的にも精神的にもハードでした。でも、抗がん剤治療後に生理が戻っていない今、 結果論ではあるものの、妊よう性温存をしておいてよかったと思っています。
🕊まとめ
紹介状を持って訪れた先で、まさかリンパ節転移を告げられるとは思っていませんでした。 次々と検査が行われ、治療方針が決まり、 妊よう性についての決断も経て、ようやく乳がん治療のスタート地点に立った気がしました。
次回は、抗がん剤治療に向けた準備や心境について、綴っていきます。
📗参考文献